生命を育む水惑星地球として存在できる条件が様々に提案されており、ゴルディロックスゾーンと呼ばれる。地球は長年にわたって生命を維持できる環境を保ってきたと考えられるが、それは大絶滅の歴史でもあり、その幾つかは宇宙起源の大絶滅事象である。白亜紀末大絶滅イベント以外でも小規模な隕石が衝突し、人類の生存に大きな影響を与えたとする仮説もいくつかあり、巨大隕石がインド洋に衝突し、巨大津波が発生、これが様々な文献に記録されている「大洪水」である、という仮説も提唱されている。さらに、現在の地球に対する大絶滅事象の発生確率は我々が従来認識しているよりもはるかに高いとする記録もある。

すなわち、宇宙関連災害とは、発生確率は地球上の「自然災害」に比べて発生確率は著しく低いが、発生すれば種の絶滅に関わるほどの非常に大きな影響を与える。

さらに、現代においては、人工衛星を利用した通信・測位・地球観測が様々な社会経済活動に必須のインフラとなっている。これらの宇宙インフラは、巨大フレアなどの太陽活動に起因する磁気嵐や高エネルギー放射線等の宇宙天気現象からしばしば被害をうける。

過去最大の太陽フレアは1859年に起きたいわゆる「キャリントンフレア」と呼ばれるイベントだと考えられている。当時は人工衛星などまだ無かったが、地磁気の擾乱による誘導電流により電信所で火災が発生したことが報告されている(当時は太陽フレアとの関連はないものと考えられていた)。人工衛星が社会インフラ化した現在同規模の現象が起きれば、その経済被害は2兆ドルに及ぶと推定されている[3]

さらに近年、本研究代表者を含む京都大学を中心とした研究グループは、これまで知られている最大級の太陽フレアの100倍から1000倍ものエネルギーを放出するスーパーフレアが、太陽とほぼ同じパラメータを持つ恒星で起きることを発見し[2]、それが理論的には太陽でも起こりうることを示した[3]

本研究会においては、地球上での様々な自然災害リスク、その他の宇宙起源の災害と比較してどれほど地球は宇宙起源災害に対して脆弱であるかを考えてゆく。

 

 

[1] “Severe Space Weather Events–Understanding Societal and Economic Impacts: A Workshop Report”, National Academy Press (2008)

[2] “Superflares on solar type-stars” Maehara et al. Nature, 485, 478 (2012)

[3] “Can Superflares Occur on Our Sun?” Shibata, Isobe, Hillier et al., Publications of the Astronomical Society of Japan, 65, 49 (2013)

Publications

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